皆さま、新年あけましておめでとうございます。
さて、この1月から個人型の確定拠出年金の加入条件が広がりました。個人事業主・一部の会社員以外に、公務員や専業主婦を含めほぼ全ての方が加入できるようになりました。…これがどれだけの人に響くかは疑問なのですが、結構画期的だと思います。そもそも「確定拠出年金」という字面が難しそうに感じますよね。厚生労働省が覚えやすくするためにiDeCo(イデコ)という愛称をつけましたが、まだ知らない人も多いはず。ということで、私のクライアントのKちゃんにインタビューしてもらう形で、数回にわたって解説してまいりたいと思います。
なぜ「確定拠出年金」っていうの?
Kちゃん(以下K):純子先生、今朝テレビで個人型の確定拠出年金が取り上げられていましたが、子どもの保育園の支度で忙しくてちゃんと見られませんでした。「年金」はなんとなく老後の備えっぽいというのはわかるけど、確定拠出ってどーゆー意味でしょうか?
波柴純子(以下J):用語を理解するために、まず「確定拠出年金」と性質が異なる「確定給付年金」について話しておこうかな。
K:かくていきゅうふ…年金?聞いたことがないです。
J:言葉は知らないかもしれないけど、退職時の給付額があらかじめ確定してる年金って意味で、どちらかといえば今までのスタンダード。例えば国民年金や厚生年金などの「公的年金」も「企業の退職金」も、将来の受取額はあらかじめ約束されているのが普通だったでしょ。それらは国や企業の責任で運用しているから、運用が想定どおりにいかない場合は不足を穴埋めしなければならないの。今は金利が低下してる上に団塊世代が大量退職して積立金がごそっと減っているから、その穴埋めが業績に影響を与えるくらいの負担になるわけ。で、2001年に導入されたのが、「確定拠出年金」なの。
K:給付額ではなく、拠出、つまり掛金が確定してるってこと?
J:そう。さすがKちゃん!
K:やっと意味がわかりました。拠出は確定してるけど、給付額はわからないってことですよね。
J:そう、確定拠出年金って、一人一人違う運用方法を選べるの。だから給付額はその成果次第。
K:えー?企業の退職金制度としても導入されてるのにそんな不確定な制度でいいの?
J:お、核心に迫る良い質問!まず知っておいて欲しいのは運用の成果は実はある程度コントロールできるものだってこと。でもこれについては後で詳しく話すわ。
個人型確定拠出年金の加入範囲拡大の背景
J:企業が仕組みを導入して掛金を負担する場合は企業型の確定拠出年金。年々導入企業は増えているけれど、大企業だけでなく中小企業も導入していて、現在24,551社(28年10月末厚生労働省調べ)。導入した企業の従業員たちが実際に運用先を一人一人が主体的に選んでいるかというと、かなりビミョー。というか、私への個別相談では「導入時の説明では理解しきれず、ほったらかしです」というものが多いわ。私に言わせればすごくもったい無い!とても有利な制度なのに。
自営業者や企業型を導入していない会社員の人は個人型の確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」に加入できるんだけど、今年からは、企業年金のある会社員や公務員、さらには専業主婦などほぼ全ての人が加入できるようになったのよ。
K:自営業の人にとっては退職金代わりになる制度が必要なのはわかるけど、その他の人にも範囲が拡大される理由はなぜ?
J:ひとつには、高齢者がどんどん増えて少子化が進む中、公的年金だけでは不足することが明らかだってこと。今回加入要件が広がって対象になった公務員は今まで共済年金という制度だったのが、厚生年金と一元化されたことで受給額が実質減ってしまうし、専業主婦も、仮に離婚した時、年金分割をしたとしても生活できる額には不足気味。だから自助努力が必要だ、っていう危機感があるの。企業やパートナーに頼らず自立するってことで、「個人型」に関心が集まっているわけ。
さらに、その自助努力の効率がもう一つのテーマで、今までも自分で積み立てる金融商品は色々あったのだけれど、マイナス金利の元では「殖える」パワーが落ちているの。なので、「投資」「運用」の要素が強い確定拠出年金が期待されているのよ。
K:投資って怖いイメージあるけど
J:Kちゃんって慎重派だものね。投資については続きで話すけど、iDeCoの概要については理解した?
K:はい。公的年金だけでは生活できなくてヤバいし、そのための備えが貯蓄だけでは低金利すぎて意味ないからっていうご時世に合わせて加入要件緩和になったわけでしょ?
J:ヤバいとか意味ないとか言い方は雑だけど、そんな感じかな。
ーーー②に続くーーー