複(副)業と所得税
人生100年時代の働き方として、1つの企業でずっと働くのではなく、ワークシェアリングだったり個人でビジネスをしたりなど複(副)業することが当たり前になりつつあります。その場合の所得税ってどうなるの?という質問を時々いただくので今回は3つのパターンを想定してお伝えします。
*ちなみにいずれも職場の雇用条件において複(副)業OKという前提です。必ず確認しておきましょう!
複数の会社で働き、そのうち1社で年末調整を受けている場合
国税庁No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人によると
2か所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
は確定申告が必要とあります。
難しく書かれていますが、年末調整は1社でしかおこなえない&年末調整の精算対象となるのはその会社からの給与のみなので、とりあえずしておきましょう。年末調整を受けない会社の給与からも源泉所得税が徴収されていれば、確定申告を行なうことで還付になる場合があります。
複数の会社から給料が発生しているが、年末調整を受けていない場合
パート・アルバイトなどによる給与収入が複数ある場合は、それぞれの額が一定以下だと職場が年末調整をしないこともありますが、給与収入の合計が103万円を超えたら所得税の課税対象となるので必ず自分で確定申告を行わなければなりません。
ちなみに複数の職場であっても合計額が103万円を超えなければ確定申告は不要なのですが、前項同様で給与から源泉徴収されているような場合は、確定申告により税金の還付が受けられる事も多いので、もらい漏れがないように確認しましょう。
給料以外の副収入がある場合
給与以外で、趣味の延長でのハンドメイド作品の販売など、ちょっとした収入「雑所得」が発生した場合もやはり自分で確定申告が必要となりますが、売上から経費を差し引いた「所得」が20万円を超えていなければ申告不要です。
時々「メルカリでいっぱい売れちゃったけど確定申告は要りますか?」という相談をいただきますが、洋服やおもちゃなど自宅にあった不用品は商品ではなく「生活用動産」と分類されるものは、仮に所得が20万円を超えても確定申告は不要です。不用品ではなく仕入れが発生するもの、いわゆる「せどり」や「転売」の利益は、この後お伝えする「事業所得」に分類されます。(ちなみに税金の話とは関係ありませんが、せどりは古物商許可証がないと違法になりますのでご注意を!)
同じハンドメイド作品の販売でも「趣味ではなくビジネス」の場合(ビジネスの定義として持続する意思があることが前提となります。一時的ではないというのがポイント)「事業所得」となります。事業所得の範囲については
国税庁No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)によると
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得
と、広範囲です(不動産所得はまた別)。基本は確定申告が必要です。事業所得の場合は個人事業主として開業届・青色申告承認申請が受理されると、経費だけでなく「青色申告特別控除(最大65万円)」を売上から差し引くことが出来ます。
例えば、平日は企業で正社員としてSEをしている方が、個人でも(職場と利益が相反しない内容・層を対象に)Web制作をしている、という場合、給与収入からの給与所得控除と事業収入からの青色申告特別控除は併用できるのも大きいメリットになります。経費を引いたあとの事業所得がマイナスになった場合、それを給与所得と通算することができるので結果的に税金が戻ることもあります(悪用はだめですよ)。
以上、3パターンについてお伝えしましたが、税金については「正しく申告」さえしていれば何も恐れることはありません。さらに清く正しい節税方法を知ることで得することも。その「正しく」がわからない!という方向けに毎年講座も行っていますので(10月くらい?)案内を楽しみにお待ちくださいね。
今回は所得税についてのお話でしたが、社会保険については「経営力サポートチーム」のメンバー、小山先生のブログをご参照ください。